再発・転移後は、希少ガンなだけあって治療法が確立されておらず、僕ら患者からみると色々な治療法が散在しているように見える状態です。
Xやブログを見てみても、人によって色々やってるし何がなにやら、、、
なので、主治医の先生と相談しながら、(場合によってはセカンドオピニオンを行い)治療法を決定していくのが良いと思いますが、その際の基礎的な理解として治療薬の組み合わせなどを記載していきます。
個人的に調べた範囲の理解で記載しているので、間違いや理解不足などあったら指摘してください。一応、可能な限り元サイト等添付しておきます。
また、治験の検索サイトや、海外含めたがん治療のニュースサイト、論文検索サイトも載せておきます。
僕も定期的に論文やニュースは確認し、気になったものはブログやXに投稿したり、この記事に追記していく予定です。
なお、手術や放射線治療等は局所制御含めて効果あると思いますが、ここでは抗がん剤を主で記載しています。
前提:論文やニュースを見るときの注意点
再発・転移後の生存率は、初発よりもだいぶ低くなっています。
が、それは程度の差はあれどのガンでもそうですし、症例数の少ない希少がんでは症例数の多いがんより確率の揺れがでる(統計よりも大きく違う数字がでる)ことが多く、完治する可能性高いんじゃないかとか個人的には思うようにしています
再発/転移してないヤツが何言ってんだと思う方もいるとは思いますが、治療にあたっては初発再発限らず、生存率などの数字に囚われないようにすることが大切じゃないかなと思います。
否定的に見えてしまう数字を気にするより、どれで治療するかという視点で捉えるというか、そんな感じで。
楽天的(という言い方が適切かは分かりませんが)な人は免疫システムが強靭になり、実際に他人より長生きする傾向にあると、先日90歳でお亡くなりになった行動経済学者(ノーベル経済学賞)のダニエル・カーネマンの著書にも書いてありますしね!免疫力大切です。
無理に前向きになる必要はないとは思いますが、数字に囚われて落ち込むよりも、気にせず行った方が免疫力も高まるし、なにより生活していて楽しい!
再発・転移後の治療方法
基本的には、下記論文に準拠しています。読み取り違いや引用間違いあったら訂正します。
骨腫瘍治療における最近の動向_pdf (jst.go.jp)
キードラッグ
Vinvrstine(VCR)=ビンクリスチン(オンコビン)
Docorubicin(DXR)=ドキソルビシン
Cyclophosphamide(CPA)=シクロホスファミド(エンドキサン)
Ifosfamide(IFM)=イホスファミド(イホマイド)
Etoposide(ETP)=エトポシド
ActinomycinD(ACT)=アクチノマイシンD
VDC-IE療法は上記の6つのうちアクチノマイシンD以外を使っている。
他、サルベージ療法(標準治療が奏功しなかったときの療法)に出てくる薬剤
Irinotecan(IRI)=イリノテカン
temozolomide(TMZ)=テモゾロミド(テモダール)
gemcitabine(GEM)=ゲムシタビン(ジェムザール)
docetaxel(DOC)=ドセタキセル
Carbopkatin(CBDCA)=カルボプラチン
Topotecan(TPT)=トポテカン(ノギテカン)
再発転移後の治療薬組み合わせ(伝聞含む)
VDC-IE療法(標準治療)
→再度VDC-IE療法を行う場合もあるようです。(ドキソルビシンが上限値に達している場合はVCかアクチノマイシンDをつかったVAC)
※奏効率については、論文上、部分奏功(腫瘍が30%以上消失)と完全奏功を合わせた数字になっているようです。
①イホマイド大量療法 不明ただし③~⑤より良いらしい
②イホマイド+エトポシド+カルボプラチン 奏効率48%
(ICE療法)
③イリノテカン+テモゾロミド 奏効率30~63%
④ゲムシタビン+ドセタキセル 奏効率14~50%
⑤トポテカン+エンドキサン(TC療法) 奏効率36~45%
⑥オンコビン+エンドキサン 奏効率13%
⑦トポテカン+アクチノマイシンD 不明
ヨーロッパでの治験(①③④⑤をランダム比較)をもとに2022年のASCO(米国臨床腫瘍学会)年次総会で発表されるデータによるとイホマイド大量療法がもっとも奏効率が高かったとのこと。ついで⑤のトポテカン+エンドキサン。
ヨーロッパの治験は継続募集されており、イホマイド大量療法に加え、③④に分子標的薬と併せたものと、②も追加した治験を行う予定とのこと。
ASCO総会のサイト等も見たが報告書や症例数、奏効率のデータは見当たらなかった(継続して探します)
個人的には、欧米のデータを参考にするときは人種的な特性の違いもあるため効果が全く同じとなるとは考えない方が良いと思います。
2024/4/12追記
イリノテカン+テモゾロミド+新薬の治験が予定されているみたいです
がんの臨床試験を探す 臨床試験情報:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
その他使用可能性があるもの
以下のものに関しては、現時点で調べた限りでは、ずばりな論文は見当たりませんでしたが。ただし、国立がん研究センターの肉腫グループが開発し軟部肉腫のキードラッグで他の肉腫への効果があることや、薬の説明書にもユーイング肉腫も記載されていることから使用可能性があると思います。
奏効率等は継続してデータ等ないか調べていく予定です。
・ハラヴェン(エリブリン)
fpj (jst.go.jp)マウス実験の記載あり
・ヴォトリエント(パゾパニブ)
_pdf (jst.go.jp) パゾパニブが有効性を示した多発肺転移を有する難治性 Ewing 肉腫
・トラベクテジン(ヨンデリス)
400107000_22700AMX01019_K102_2.pdf (pmda.go.jp)大鵬薬品工業のデータ
骨外性ユーイング肉腫に部分奏功(PR)の記載あり
国立がん研究センターの肉腫(サルコーマ)グループは、希少がんである肉腫に対して、わが国で最も多くの臨床試験・新規薬剤の治験を実施しています。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)、日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS)、日本横紋筋肉腫研究グループ(JRSG)などの中心メンバーとして、肉腫に対する多施設共同臨床研究に参加するとともに、国立がん研究センターの早期・探索臨床研究センター(EPOC)、企業などと協力した国内・国際共同治験、医師主導治験を積極的に推進し、肉腫に対する新たな治療法・医薬品・医療機器を開発しています。
これまでに国立がん研究センターの肉腫(サルコーマ)グループが中心となって開発に携わった抗がん剤としては、エリブリン(®ハラヴェン;Eisai)、パゾパニブ(®ヴォトリエント;GlaxoSmithKline)、トラベクテジン(大鵬薬品工業)などがあります。
肉腫(サルコーマ) | 希少がんセンター (ncc.go.jp) より一部抜粋引用
転移後のVAIA療法(基準にした論文には記載なし:2024/4/12追記)
フラジャイルという医療漫画の転移ユーイング肉腫患者への治療薬として作中に登場していた。
調べてみると、ヨーロッパでは限局性ユーイング肉腫への標準治療の一つっぽく、小児がん診療ガイドライン2016に転移時の治療として記載されているみたい。
(太字と下線はブログ主)
現時点において転移例に対して高い有効性が期待できる化学療法は存在しない。欧米
の臨床研究において,ビンクリスチン(VCR)+ドキソルビシン(DXR)+シクロホス
ファミド(CPA)による VDC 療法とイホスファミド(IFM)+エトポシド(ETP)に
よる IE 療法の交替療法,もしくは VCR+アクチノマイシン(ACD)+IFM+DXR に
よる VAIA 療法に外科療法,放射線治療を組み合わせた集学的治療を行うと一時的に
寛解,もしくは部分寛解に至るが,全生存率(OS)は 20%前後と不良である1, 2)。造血細胞移植併用大量化学療法が行われているが,治療成績が改善したという明らかなエビデンスは得られていない.転移例に対する自家造血細胞移植(autologus stem cell transplantation:ASCT)を併用した大量化学療法の有効性について検討した
VDC、ブルスファン(造血幹細胞移植前治療薬)+メルファラン+造血幹細胞移植(2024/4/15追記)
初発の骨盤巨大腫瘍(手術不可)に対して、初期治療として,オンコビン+ピラルビシン +エンドキサン(VDCに近い?) と IEの交替療法を 5 コース行い,L-PAM(メルファラン) + エトポシド+ カルボプラチン による大量化学療法と 自家抹消幹細胞移植を行った.生着後に腫瘍床への放射線療法を行った.自家抹消幹細胞採取は初期治療 3 コースを終了した後に行ったもの。
※この治療を行った当時、日本では標準治療が確立していない時期だったとのこと(2011年以前か?)
ESFT において,大量化学療法を併用した造血幹細胞移植は,転移例や再発例において多剤併用化学療法に引き続いて行われるが4),欧州 Euro-E.W.I.N.G.99 研究及びEWING-2008 研究において,限局性の高リスク症例(初期治療反応不良,腫瘍容積 200 mL 以上,切除不能)に対して,通常の化学療法よりブスルファン(BU)+ L-PAM による大量化学療法の有効性が報告されている5)
巨大骨盤原発 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍に対し,外科的切除せず大量化学療法と放射線療法を行った一例_pdf (jst.go.jp)
※ヨーロッパではVDC-IEが標準治療ではないため、通常の科学療法とは当時のヨーロッパの科学療法(VAIA療法)か?
自家造血幹細胞移植(ASCT)造血細胞移植=HCT、造血幹細胞移植=HSCT)
再発等のユーイング肉腫に対して大量化学療法+自家造血幹細胞移植が実施されることがありますが、有用性については現時点では賛否両論(エビデンスが弱い)のようです。
但し、再発後の大量化学療法で完全寛解に至った症例においては、予後が改善される可能性あると報告されています。
小児がん診療ガイドライン20168章 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍 (jspho.org)
4/17追記
縦隔発生ユーイング肉腫に対して自家末梢血幹細胞移植併用高用量化学療法を行い寛解を得た一例(初発:縦隔+胸膜浸潤:右癌性胸膜炎 UICC TNM分類ステージ4B)_pdf (jst.go.jp)
小児に対するHSCT(チオテパ利用)治験の評価資料
400093000_23100AMX00292_G100_1.pdf (pmda.go.jp)
4/15追記
論文みてると造血細胞移植、造血幹細胞移植と概ね2パターンで書いてあるけれど、同じものという理解で良いのか?
九州大学病院がんセンターのHPみると、造血細胞移植の造血細胞に幹細胞が入っていることが必要みたいなので同じっぽい?
移植する造血細胞の中に、患者さんの体内で血液細胞(白血球、赤血球、血小板)を生涯にわたりつくり続けることのできる「造血幹細胞」が含まれている必要があります。造血細胞移植(hematopoietic cell transplantation:HCT)|造血器悪性腫瘍|九州大学病院のがん診療|九州大学病院 がんセンター (kyushu-u.ac.jp)
分子標的薬
現時点では、分子標的薬の奏効率は約10~20%で、その治療効果は一時的な場合が多いとされているようです。
免疫細胞療法(治験段階中:ほかに治療法がないなど様々な条件あり。主治医と要相談)
CAR-T細胞療法
CAR-T療法とは、患者の血液から作ったCAR-T細胞と呼ばれる細胞を用いたがん の治療方法のことです。CAR-T細胞は患者から採取したT細胞に遺伝子導入を行うことで作られ、がん細胞を選択的に攻撃できるようにしたものです。CAR-T細胞は患者自身の血液を元に製造施設で作られ、点滴で再び患者に投与されます。一度投与されたCAR-T細胞は患者の体内で増殖してがん細胞への攻撃を続けるため、1回の投与で治療が完了します。
現在、国立がん研究センターで治験をやっているようです。(2024/4/10)
多がん種 K1323 | 国立がん研究センター 東病院 (ncc.go.jp)
治験の検索
がんの臨床試験を探す:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
ユーイング肉腫の場合、チャット形式のところに『ユーイング肉腫』と入力して検索するのが一番早いと思います。
癌種から調べるとそもそも希少ガンだから区分がでてこない(笑)
2024/4/12追記
イリノテカン+テモゾロミド+新薬の治験が予定されているみたいです
がんの臨床試験を探す 臨床試験情報:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
がんのニュース検索サイト
Clinical Newswire
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Clinical Newswire (cnw.sakura.ne.jp)
海外がん医療情報リファレンス
ユーイング肉腫 | がん治療・癌の最新情報リファレンス (cancerit.jp)
海外のがんのニュース記事サイト(ecancer)
日本の論文検索
AACR記事検索(アメリカの論文検索)
おまけ
イリノテカン+テモゾロミドのレジメン例
koukai Ewing イリノテカン+テモゾロマイド.pdf (oita-u.ac.jp)