悪名高き(?)近藤誠先生の一般向け教養新書
ブックオフで安く売ってるのを見つけたので、どんな内容なのかなと思い購入
もともと僕は近藤誠先生のイメージは放置療法と捉えていて、あまり好意的ではない。
その前提のうえで読んでの感想なのでご留意を。
[:contents
腫瘍には、『本物のがん』と『がんもどき』があるとする
がんは成長するまでに10年~20年かかり、がんが転移するか否かは、がんの発生初期に決まっている(成長したがんが転移能力を取得することはない)
転移するがんは『本物のがん』であり、血中にがん細胞があるし、転移先にすでにがんが(発見されない小ささでも)存在している。
なので治療しても基本的には再発するし意味がない。
転移しないがんが『がんもどき』であり、これは原発層で大きくなるが、そのうち自然消滅する場合もあるし、この腫瘍が原因で死ぬことはない。ただし、大きくなったことにより臓器に影響が出てきた場合には放射線等や他方法で対処すれば良い
手術をすると、手術後の感染症や合併症、後遺症で死ぬか寿命縮むリスクがあるし、手術した傷口に血中のがん細胞があつまり、爆発的に転移細胞が増悪する可能性があるとする。
そして、抗がん剤は毒性が強く、逆に寿命を縮めるものであり、腫瘍への効果も薄いという理解から、『本物のがん』の場合、放置したよりも抗がん剤治療したほうが死ぬのが早くなるからすすめない(予防的抗がん剤も否定)
がんもどきの場合も、そもそも放置して良いものだから抗がん剤はすすめない
というような考え方
対症療法としての放射線(照射線量を減らしたもの)を勧めていることが多い。
※ただし、良い病院などは自分で探せとの考え
なお、余命宣告の余命=生存期間の中央値(100人いたら50人が死ぬまでの期間)とする。(これは正しいと思う)
そして、この余命は、『抗がん剤治療などを受けた人』の余命期間であり、抗がん剤などを受けなければ生存期間はもっと伸びるはずだとする。
基本的には固形がん対象の考え方(肉腫については記載がない)
上記考え方は、基本的には固形がん対象の考え方のようであり、リンパ腫のような血液がんは血中にがん細胞がある状態なため、抗がん剤が有効であるとする。
ただし、標準治療よりも回数は減らすべきだし、放射線も線量を減らすようにという感じ。
脳腫瘍に関しては治らないし治療は全て無意味だから諦めろという感じ。
そして、すべてのがんに自身の考えはあてはまる(相談を受けてきた)。書いていないがんについては類推して欲しいとするが、そもそも肉腫(Sarcoma)については一切記述がない。
個人的に肉腫は血液がんに近いというか、固形がんと血液がんの中間というようなイメージがある(特に、骨などは血液がんに近いという印象)
そのために特殊性があるが、本書だけでは一切分からない。著者は、より詳しい場合は自身の別の本を読めと書いてあるが、そもそも一切載っていないことを考えると、別の本に載ってるか怪しい気がしてくる(笑
ブックオフとかで安く売ってたら購入してみようかなあ
意外とまともなことも言っているが、疑問に思うことも多々あり
総合的にみると、抗がん剤は毒性が強く、放射線も弊害がある。基本的には放置して症状が出てきたときに治療を行う方がQOL(生活の質)が上がるというような考え方であり、また、日本の医療が外科偏重、治療開始前に治療しなかった場合の余命を伝えることの問題点の指摘など、意外とまともなことも言っているなあという印象(だから支持を得ていたということもあるだろう)
また、がんとの共存というような考え方も垣間見える。
が、基本的には、がんは進行がゆっくりだから、がんもどきなら治療の必要はないし、がんなら治療しようが生存期間そんなに変わらない(むしろ治療しないほうが多少伸びる可能性がある)んだから潔く死ねというような感じであり、転移があろうが根治を目指している側からすると疑問に思うことも多くある。
高齢者ならともかく若年層のがんは思考の対象に入っていないようにも思える。
また、標準治療は、『日本で多くの人が受けている治療』という意味しか無いとし、陽子線や重粒子線、分子標的薬等は基本的に効果がない(陽子線は放射線と変わらない。重粒子線は強すぎて後遺症のほうが大きい)とするが、正直このあたりは多いに疑問に思う(最新の状況をフォローアップ出来ていなかったのではないかとも思ってしまう)
また、セカンドオピニオン専門外来の事例をまとめた本であり、『外来にきた患者たちのその後』は分からなく、それはそれでどうなのかなあとも思う。
というか、仮に病気が悪化したとしても、転移がんの人に対しては治療せQOL上げろという発想だから『大変でしたね』で終わりだろうし、
著者のいうがんもどきの人が転移したとしても、著者は100%がんもどきだとは言わないので『あなたのは本物のがんでしたね。可能性は低かったんですが残念です』で終わりであろうことが想像できる。
医者は手術したいから基本的にウソをつくし、勉強も自分に比べてしていない。そんなやつらのいう事を聞く必要はないし、治療を治療を薦めてくる家族には『専門病院でみてもらったらがんではなかった』とかウソを言って治療受けなければ良いなど、めちゃくちゃなことも言っている(笑
医者へのルサンチマン(恨みつらみのような感情)がみられる叙述が多々ある。
もうすでに著者はお亡くなりになっているため、信用するか信用しないかは個々人の判断にはなるが、信用して放置して手遅れになったとしても責任は自分にあるのである。